行明

日本の室町時代(西暦1336〜1573年)の僧、念誉行明(ねんよぎょうめい)または長沼行明(ながぬま-)は、浄土宗をその宗旨として当時の筑前国―今の福岡県内部域―を中心に活躍し、今にあたる後世に数多の遺産を伝えた。

豊後国の臼杵―今の大分県の中東部『臼杵市』域内―がその郷の地で、当地の武将―いわゆるキリシタン大名として知られる―大友宗麟(おおともそうりん)に代々仕えた家臣の者であった行明は、筑前国や筑後国の浄土宗の復興に尽力し、やがて永禄6年(西暦1563年)に没した。

その『假墓』なるものが伝わるという、現福岡市南区の正法寺。
その『假墓』なるものが伝わるという、現福岡市南区の正法寺

目次

今田正昭の筆による『福岡寺院探訪』という寺誌においては、収録の各寺院の別によって、行明、念誉行明、長沼行明、行蓮社念誉、という呼び名が確認される。江戸期の儒学・本草学者―貝原益軒の著した史書『筑前国続風土記』および同書の『附録』『拾遺』においても、各寺院についての記録にこれらのうちの行明、念誉の名が見られる。

生涯

生年についてはここに定かではない。『筑前国福岡地誌』という地史料に『・・・開基の僧行明ハ豊後国大友宗麟家臣長沼氏ノ男ナリ』と記されているという(『福岡寺院探訪』 P.86 頁『栄昌寺』)

妙円寺の住職を務める傍ら[1]、浄土三部経の四十八願に因んで四十八ヶ寺の建立を企図し、筑前国を中心に数多の浄土宗の寺を開き、筑後国御井郡藤山の地で永禄6年(西暦1563年)の5月9日に遷化(『筑前国続風土記 拾遺』 頁『席田郡 摂取寺』/『福岡寺院探訪』 P.166 頁『天然寺』)

弟子

行明の弟子たる人物に行誓覚公という名の僧がいた。この僧は、現福岡県福岡市博多区中呉服町にある本願山選擇寺という浄土宗の寺の開基の祖である。(『福岡寺院探訪』 P.73 頁『選擇寺』)

開基寺

行明の開いた寺々は、中にはその後に消失の運命を辿ったそれもあるものの、今に遺されたそれも少なくない。

  • 妙円寺 - 秋月山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市博多区住吉にあり、天文10年(西暦1541年)の開基。行明が住職を務めたこの寺には、『行明上人伝』という史料が遺されているという[2]
  • 摂取寺 - 光明山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市博多区立花寺にあり、開基の暦年不詳。元は龍華寺という寺の子院であった。
  • 西専寺 - 紫雲山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市博多区諸岡にあり、開基の暦年不詳。
  • 通津寺 - 超岸山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市博多区板付にあり、開基の暦年不詳。
  • 栄昌寺 - 宗玖山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市博多区上川端にあり、天文年間(西暦1532〜1544年)の開基。
  • 正法寺 - 天龍山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市南区横手にあり、開基の暦年不詳。
  • 天然寺 - 自然山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市西区姪の浜にあり、天文年間(西暦1532〜1555年)の開基。
  • 極楽寺 - 清光山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市南区若久にあり、永正年間(西暦1504年〜1521年)の開基。
  • 本願寺 - 金峯山と号する浄土宗の寺で、現福岡県福岡市西区野方にあり、天文年間(西暦1532〜1555年)の開基。近世には極楽寺に属した。
  • 無量寺 - 智願山と号する浄土宗の寺で、現福岡県春日市須玖北にあり、開基の暦年不詳。[3]
  • 常福寺 - 高峰山(古書には『高明山』とあり。院号は『修善院』または『修連院』)と号する浄土宗の寺で、現福岡県北九州市若松区小竹にあり、開基の暦年不詳。[4]
  • 称名寺 - 現福岡県北九州市若松区安屋にある浄土宗の寺で、喜永3年(西暦1850年)に上の常福寺から独立。[5]
  • 安養寺 - 願生山と号する浄土宗の寺で、現福岡県北九州市若松区山手町にあり、開基の暦年不詳。本尊は『一光三尊阿弥陀仏』、院号は回向院。[6]
  • 西林寺 - 宝珠山と号する浄土宗の寺で、現福岡県糟屋郡篠栗町大字尾仲にあり、永禄6年(西暦1563年)の開基。院号は池徳院。
  • 浄土院 - 安楽山と号する浄土宗の寺で、現福岡県古賀市新原にあり、永禄年間(西暦1558〜1569年)の開基。寺号を往生寺という。[7]

その他。

推定開基寺

  • 西方寺 - 光雲山と号する浄土宗の寺で、現福岡県久留米市寺町にあり、文禄3年(西暦1594年)の開山。『念誉』という僧によって開かれた寺であると伝わるが、この開山年度の通り、念誉行明が没した後に創建されている。所在が行明の活動圏内にあたる筑後国であることや、浄土宗というその宗旨、時代の近似性などからして『念誉』が『念誉行明』である可能性は高いと推測できるが、ここに確証は無し。

資料