西観寺 〔慈照山〕

慈照山との山号を称する真言宗の一ヶ寺―西観寺(せいかんじ)というその寺は、福岡県都―福岡市のその南の外れの山の麓に伽藍を置いている。

不動明王を本尊に据えるこの寺は、遥かなる歴史を秘める油山(あぶらやま)という霊山をその南に見据えつつ、水子に大師、そして観音などの数多の石仏を境内に安置し、その日々のうちに多くの参拝の者たちの歩みをたたえるという。

遥か悠久の霊峰―油山を背後に高く聳える『慈悲大観音』
遥か悠久の霊峰―油山を背後に高く聳える『慈悲大観音』

目次

歴史

大浦という僧の開基による昭和55年(西暦1980年)の開山。

寺誌『福岡寺院探訪』によると、かつては樋井川(ひいかわ)―現所在地からいささか北のところに広がる町―に布教所を開いていたが、この年に至って現所在地に移転、堂宇を建立した。この寺誌の編纂期―昭和63年(西暦1988年)〜平成2年(西暦1990年)―でその住職は第1世、すなわち開基者の大浦氏であった。

伽藍

この地の近世の政(まつりごと)のその中枢をなしてきたところは、今に中央区という名称をもって福岡市のその一角を占める。その内に佇む城址―福岡城跡から南方へと下れば、市街は今に城南区と呼ばれる区域への移り変わりを見て、更にやがては東西に連なる山々の陰を見ることになる。

『油山』―西域と呼ばれる地より海を越えてこの地にその居を置いた遥か古の時代の僧にその名の源流を秘める山。西観寺はこの山の麓に広がる住宅街の一角にあり、今や都市化の波に呑まれて久しいところの町々を北のほうに見据えている。

斜面に位置するその境内は小路を隔てて大きく2つに別れており、一見では庫裏―住職らの住まい―と見まがってしまうような外観の建物をその南の区画に、他方の―小路の北の区画は、それ自体が庭園として作られたものであることを思わせるつくりの場となっている。

南伽藍

おそらくこの寺の本堂はこちらにある。山門が置かれているからである。

南の伽藍と開かれたその山門
南の伽藍と開かれたその山門

寺号―『西観寺』と記された木札を掛けるこの山門を入ると、そのすぐ右に水子の地蔵が立っている。それを過ぎればすぐさま玄関らしきものに突き当たる。

その外観は一見にあっては民家との違いがさほど感じられぬ。

北伽藍

寺地たることをより思わせるのは南のそれよりもこちらである。

北の伽藍と開かれたその門
北の伽藍と開かれたその門

寺号―『西観寺』を記した木札をその上方に掛ける門。『浄財』と記された木箱―神社における賽銭箱とほぼ同じ外観―を中央に据えるこの門を入ると、入念な整備のゆき届きを感じさせる、なかなかに美しい空間が参拝者を迎える。この門は内に膨大な数の小立像を安置する『水子堂』と一体になっており、これをくぐってすぐ右のほうに滝とともに立つ不動の石仏がある。

まず目を惹くのが、『慈悲大観音像』と銘打たれた大きな石像である。上掲の寺誌『福岡寺院探訪』におけるこの寺についての説明のうちに『境内に観音立像あり』との記述があるが、おそらくはこれのことなのであろう。

小滝と小崖の上に立つ不動明王
小滝と小崖の上に立つ不動明王

庭園を思わせるその境内は周囲を塀に囲まれており、その内側の面にはほぼ間断なく石仏が安置されている。これは名のあるかの霊場群―四国八十八ヶ所を模したもので、ひとつひとつがその各々の札所の本尊に対応している。

『第四十五番 岩屋寺 不動明王』―『第四十六番 浄瑠璃寺 薬師如来』、・・・塀の内側に並ぶ石仏群は、そのいずれもが四国八十八箇所の札所に対応する。
『第四十五番 岩屋寺 不動明王』―『第四十六番 浄瑠璃寺 薬師如来』、・・・塀の内側に並ぶ石仏群は、そのいずれもが四国八十八箇所の札所に対応する。
すなわち、霊山寺(りょうぜんじ―釈迦如来)、極楽寺(ごくらくじ―阿弥陀如来)、金泉寺(こんせんじ―釈迦如来)、大日寺(だいにちじ―大日如来)、地蔵寺(じぞうじ―地蔵菩薩)、安楽寺(あんらくじ―薬師如来)、十楽寺(じゅうらくじ―阿弥陀如来)、熊谷寺(くまたにじ―千手観世音菩薩)、法輪寺(ほうりんじ―涅槃釈迦如来)、切幡寺(きりはたじ―千手観世音菩薩)、藤井寺(ふじいでら―薬師如来)、焼山寺(しょうざんじ―虚空蔵菩薩)、大日寺(だいにちじ―十一面観世音菩薩)、常楽寺(じょうらくじ―弥勒菩薩)、国分寺(こくぶんじ―薬師如来)、観音寺(かんおんじ―千手観世音菩薩)、井戸寺(いどじ―七仏薬師如来)、恩山寺(おんざんじ―薬師如来)、立江寺(たつえじ―延命地蔵菩薩)、鶴林寺(かくりんじ―地蔵菩薩)、太龍寺(たいりゅうじ―虚空蔵菩薩)、平等寺(びょうどうじ―薬師如来)、薬王寺(やくおうじ―薬師如来)、最御崎寺(ほつみさきじ―虚空蔵菩薩)、津照寺(しんしょうじ―地蔵菩薩)、金剛頂寺(こんごうちょうじ―薬師如来)、神峰寺(こうのみねじ―十一面観世音菩薩)、大日寺(だいにちじ―大日如来)、国分寺(こくぶんじ―千手観世音菩薩)、善楽寺(ぜんらくじ―阿弥陀如来)、竹林寺(ちくりんじ―文珠菩薩)、禅師峰寺(ぜんじぶじ―十一面観世音菩薩)、雪蹊寺(せっけいじ―薬師如来)、種間寺(たねまじ―薬師如来)、清瀧寺(きよたきじ―薬師如来)、青龍寺(しょうりゅうじ―波切不動明王)、岩本寺(いわもとじ―阿弥陀如来/観世音菩薩/不動明王/薬師如来/地蔵菩薩)、金剛福寺(こんごうふくじ―三面千手観世音菩薩)、延光寺(えんこうじ―薬師如来)、観自在寺(かんじざいじ―薬師如来)、竜光寺(りゅうこうじ―十一面観世音菩薩)、佛木寺(ぶつもくじ―大日如来)
空海たろう胴の立像
空海たろう胴の立像
明石寺(めいせきじ―千手観世音菩薩)、大宝寺(だいほうじ―十一面観世音菩薩)、岩屋寺(いわやじ―不動明王)、浄瑠璃寺(じょうるりじ―薬師如来)、八坂寺(やさかじ―阿弥陀如来)、西林寺(さいりんじ―十一面観世音菩薩)、浄土寺(じょうどじ―釈迦如来)、繁多寺(はんたじ―薬師如来)、石手寺(いしてじ―薬師如来)、太山寺(たいざんじ―十一面観世音菩薩)、円明寺(えんみょうじ―阿弥陀如来)、延命寺(えんめいじ―不動明王)、南光坊(なんこうぼう―大通智勝如来)、泰山寺(たいさんじ―地蔵菩薩)、栄福寺(えいふくじ―阿弥陀如来)、仙遊寺(せんゆうじ―千手観世音菩薩)、国分寺(こくぶんじ―薬師瑠璃光如来)、横峰寺(よこみねじ―大日如来)、香園寺(こうおんじ―大日如来)、宝寿寺(ほうじゅじ―十一面観世音菩薩)、吉祥寺(きちじょうじ―毘沙門天)、前神寺(まえがみじ―阿弥陀如来)、三角寺(さんかくじ―十一面観世音菩薩)、雲辺寺(うんぺんじ―千手観世音菩薩)、大興寺(だいこうじ―薬師如来)、神恵院(じんねいん―阿弥陀如来)、観音寺(かんのんじ―聖観世音菩薩)、本山寺(もとやまじ―馬頭観世音菩薩)、弥谷寺(いやだにじ―千手観世音菩薩)曼荼羅寺(まんだらじ―大日如来)、出釈迦寺(しゅっしゃかじ―釈迦如来)、甲山寺(こうやまじ―薬師如来)、善通寺(ぜんつうじ―薬師如来)、金倉寺(こんぞうじ―薬師如来)、道隆寺(どうりゅうじ―薬師如来)、郷照寺(ごうしょうじ―阿弥陀如来)、天皇寺(てんのうじ―十一面観世音菩薩)、国分寺(こくぶんじ―千手観世音菩薩)、白峯寺(しろみねじ―千手観世音菩薩)、根香寺(ねごろじ―千手千眼観世音菩薩)、一宮寺(いちのみやじ―聖観世音菩薩)、屋島寺(やしまじ―十一面観世音菩薩)、八栗寺(やくりじ―聖観世音菩薩)、志度寺(しどじ―十一面観世音菩薩)、長尾寺(ながおじ―聖観世音菩薩)、大窪寺(おおくぼじ―薬師如来)、・・・と。

更に、開山より前の昭和53年(西暦1978年)に西明愛子なる人の手により建てられたものという『殉国』『殉難』の供養塔、その宗旨たる真言宗の祖・弘法大師―空海であることを思わせる銅像、ほかにも数多の石仏や銅像が内に散在。

その近場より眺められる下の町々
その近場より眺められる下の町々

悠遠の時代から横たわる霊峰―油山の影を背後に仰ぎ見る西観寺の伽藍はそこにあり、今日も人々の暮らす下の町々を静かに見据えている。

余話

上掲の寺誌『福岡寺院探訪』によれば、この寺は佐賀県の基山町にある瀧光徳寺(りゅうこうとくじ)という寺と関係が深いという。瀧光徳寺は中山身語正宗(なかやましんごしょうしゅう)という真言宗系の一宗派の大本山にして、同町に大伽藍を有する寺であるが、この寺と西観寺とが持つその『深い関係』なるものが如何なるそれであるのかについては、ここに定かではない。

更に、その境内の様子などから本寺が真言宗を大本の宗旨とすることは間違いないと見られるが、同寺誌にはこの寺―西観寺が『真言正宗』の寺であると記されている。加え、この寺自身もそう説明している[1]

このような宗派が存在しているのかについてはここに定かでないが、瀧光徳寺との関係を持つという上記の情報とあわせれば、本寺の宗旨の正しきところは『身語正宗(しんごしょうしゅう)』か、と推測することができようか。

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所在

住所は福岡県福岡市城南区東油山4丁目15番16号にて、電話番号は092-862-0513、最寄の電停は福大前駅、最寄のバス停は西鉄バスの油山停留所。

資料